【人生相談】漫画家を目指すか就活するか、迷っています
三砂ちづるのかけこみ人生相談(幻冬舎プラス+)
回答「あなたはオリジナルで破天荒で豊かな人生を選べる人です」
人がどんなことに悩み、知者がどんな回答をするのか、とても面白いです。
読み流してしまうのが惜しい人生相談をシェアします。
◎相談(ボンボン・大学生・21才・男性・東京都)
21才、大学4年生です。親元を離れて東京で一人暮らしをしています。
幼いころから漫画家を志、無心に絵を描いていました。
東京の大学を受験したのも出版社のある都会に出たかったからで、
両親を納得させるために名のある大学をうけて合格しました。
その後、大学2年のときに出版社から新人賞をもらい、雑誌に作品が掲載されました。
その後も何度か作品が載り、いまは漫画家の先生のもとでアシスタントとしてお給料をもらいながら修行をしています。
しかし、卒業をまじかにして、このまま社会人になっていいのか不安です。
自分は世間知らずでないのか、夢を必死で追いかけてきたつもりでも、他のマジメな学生たちがしているであろう、社会にでていくための準備や勉強から逃げていただけなんじゃないか。この世界でも自分より技量のある人はいくらでもいる・・・いろいろ考えて立ち止まってしまっています。
卒業後もアシスタントで一応食いつなぐことはできますが、やはりそれだけでは不安な額であることには違いありません。でもそのアシスタント先の先生や先輩方、打ち合わせをする出版社の編集さんはとても親切で、僕を育てようとしてくれています。
就職した先輩や大学の先生にも相談してみると、「ムチャをするなら若いうちのほうがやり直しがきくだろう。でもお前の人生だからなんとも言えない」と言われます。
一度就職して社会経験を積んでみるべきでしょうか?
それとも自分を信じてこのまま突き進むべきでしょうか・・・・・。
備えとしてこの3年半、賞金やバイト代やアシスタント代で貯めてきた貯金が150万円あります。就職活動を行う場合は自分でもう1年分の学費と家賃を払って、あらためて在学生として就活するつもりです。
最後は自分で決断するしかないことはわかっていますが、なにとぞ僕にアドバイスをお願いします。
漫画家めざしたらいいとおもう、就職ってのは後からでもできるし、就職っていうのはお金だけの問題だし、自分の可能性を信じてやってみたらいいじゃん。それにしても、こういう出来のいい人っているんだよね、すっごいっことを軽く成し遂げていて、凡人にはひとつでも大変な事なのに、いるんだって、何やってもすごい人が・・・だけど、年とったらみんな一緒だけどね。
◎お答えします(三砂ちづる)
人間、何をやっているときが一番楽しいかといえば、好きな事をやっているときが一番楽しい。
無心になって、打ち込む事が見つかっていて、しかもその分野で賞もとり、仕事がついている。そんな好きなことを仕事にできるあなたはなんとすばらしい人だろう。
早熟で聡明で才能にあふれている。
あなたはどうやら何をやらせても才能のある方のようだ。
しかも謙虚で思慮深く、人望もある。
おそらくあなたは受験勉強もよくこなし、立派な大学の学生さんのようだから、就職活動さえすれば、人もうらやむ就職先が決まるような立場におられるのだろう。
だからこそ、迷うのだ。あなたが名前さえ書けば入れるような、名目だけ、みたいな大学にいっておられて(そういう大学の方、すみません)、就職活動をしてもどうせ大した就職先なんかあるまい、と思っていたらこんな事で悩まない。
好きな事もみつかっていて、賞も取っていて、すでに編集さんもついていて、そこを突き進む準備は十分できているのだから。
迷わず漫画を描き続ければよいのである。
あなたが悩むのは、あなたが、”エリート学生”だからなのだろう。
つまり、あなたのおしゃる「一度就職して積んでみる社会経験」というのは、おろらくかなりのレベルの高い経験なのであろうと思う。
身も蓋もない言い方ですが、たとえば国家公務員とか、大手銀行勤めとか、商社マンとか、そういう、世間から見て、うわーすごいな、と思われるような未来が、就職活動さえすれば、おそらく、あなたに約束されているのに違いない。
しかも、あなたはいわゆるお金持ちのボンボンではない。
きちんとお金と家族のことも考えている。普通より何らかの事情でご苦労な家庭に育っておられるようであるから、世間的な常識もよくわかった聡明で謙虚な方だ。
就職活動をして「まともな」社会人をやることが、ご家族を喜ばせるのではないか、とも思っている。
ご家族は、家族のことなど心配せずに好きな漫画を描きなさい、とおしゃっているのではないかと思うが、あなたが、それでよい、と思えない、良き息子なのだ。
そうであれば、やってみたらどうですが?就職活動。
底を経て、将来やっぱり漫画家になるのなら、どんな経験も、肥やしになる。
そういう経験も得難い経験だ。
それに、それだけ才能あるあなたなら、激務の「社会経験」をしながら、平行して漫画家としてもやっていけないとは、どうして言えよう?できると思う。
激務のエリートビジネスマンをやりながら、歌を歌ったり、本を書いたりしてきた人はいろいろいらっしゃる。小椋佳さんとか、辻井喬さんとか。
え?世代が違うから知らない?それならぜひ調べてください。
あなたはきっと彼らのような方なのだと思う。
あの、手塚治虫さんだって、「本業は医者で漫画家は副業」なんて言ってましたよね。
あなたもそういう生き方を目指したらどうか?
あなたの悩みは、世間的に言えば、贅沢な悩みだ。しかし、その贅沢な悩みは、人並みはずれた努力と直感に裏付けられた、あなたの豊かな才能に裏打ちされたものだ。
あなたはできる人なのだから、とことんやればいい。
つまり結果として、わたしは、あなたには両方やってみればよいでしょう、と言っているのである。就職活動し、エリートサラリーマンを目指せ。
漫画も諦めないで描き続ければいい。そしてあなたのあふれる才能を存分に開花させ、人に何と言われようと、あなあ自信の豊かな人生を生きるのだ。
現代のレオナルド・ダビィンチを目指せ。あなたなら十分にできると思う。
才能ある若者であることはすばらしい。あなたのここまでの人知れぬ努力にこそ、心より敬意を表したい。
誰とも似ていない、オリジナルで、破天荒で、めちゃくちゃな、そして豊かな人生をおくりたまえ、あなたはそれができる人である。
漫画家になりなさいと言ってみたり、両方めざしなさい、と言ってみたり、今回の回答はさすがの先生もちょっと困ったみたいです。悩みでもなんでもないよね、自分で自分に向き合って、覚悟を決めて自分で進んでいくだけでしょう。結果はわからない、だれにもわからない、やってみなければわからない、