こんにちは~ あんかけ(@guam345)でーす。
忘れられない本があります。
「時刻表2万キロ」宮脇俊三著です。
この本は何かに夢中になった先に訪れる哀しさが書かれています。
達成感の後にくる寂寥感に驚愕しました。
2度とあんなに夢中になれる日々は訪れなかった。
(晩年はアルコール中毒に苦しめられた)
人生ってなんだろう、と考えさせられた一冊でした。
人が夢中になることの光と影が読み取れて、非常に面白く、また忘れられない名著です。
宮脇俊三は小学生の頃から「時刻表」マニアだった。
「時刻表」さえ読んでいればご機嫌な小学生だった。
その後鉄道に乗り始める。国鉄のローカル線に乗ることが趣味の学生生活をおくる。
国鉄ローカル線に乗って帰ってきてから、自室にある日本地図の鉄道線を赤いペンで塗りつぶしていく、それが理科室にある人体に血管が通ってるのに似ていて、それを赤く塗っていくのも楽しみだった。コツコツと塗りつぶしていったのでしょうね。
わかる気がします。
東京大学を卒業して中央公論社のサラリーマンになっても、
土曜、日曜の日程をやりくりして、国鉄ローカル線に乗る。
婚期がおくれたのも国鉄ローカル線の旅に夢中だったからだ。
40才近くになってから結婚している。
【鉄道紀行文 宮脇の作家デビュー作。1978年河出書房新社から刊行、同年の日本ノンフィクッション賞受賞、鉄道を主題にした紀行文としては屈指の名作と言われている。】
「時刻表2万キロ」は幼い時から時刻表マニアの宮脇俊三が乗車区間があと10%(2000キロ)で完全乗車なるところから始まっている。
鉄道とか時刻表に興味がなくても引き付けられて読み進めます。
理屈でなく時刻表さえ見ていれば幸せで、列車に乗っているだけで心地いい、
旅が目的でもなく、名所旧跡を訪れるでもなく、
時刻表を読んで列車に乗るのをただ楽しんでいる。
文体がいいんです、普通のサラリーマンが好きなことを好きと淡々と書いてる。
宮脇俊三の普通感覚が読むものを引き付けるんだと思う。
鉄道を乗るのに宮崎俊三が自ら課したルールは多くありません。
1. 未乗区間に関しては、夜間には乗らないこと。
2. 完全踏破を立証するのは、自分自身である。あえて、写真とか切符などの証拠を求めない。(後に変更せざるを得ないことになる)
3. 廃線になる前に、未乗区間をつぶすこと。
4. "国鉄全線走破"という目的を決して忘れないこと。
ルールとしてはこの程度でしょうか、未乗区間への移動手段については、制約を設けていません。飛行機、バス、タクシーなどを駆使しています。ですが、基本はやはり国鉄です。未乗区間に移動するために、既に乗った幹線鉄道の70パーセントに乗ったとも書いています・・・・。
同じ駅を通過することも、一日のうちに何度かありました。本書で取り上げられている路線の多くは、廃線の憂き目を見たか、第三セクターに移管されています。ほとんどが、盲腸線だったからです・・・・。
最終章
足尾線の1.3キロを搭乗することにより、著者の国鉄全線完乗は達成されました。
その時の描写を忘れられません。
小さい時からの憧れの国鉄全線完全乗車が達成されたのは、足尾線の1.3キロ、その時の気持ちを「殺伐とした風が吹いた」と表現しています。
衝撃でした。40数年をかけて追い求めてきた目標を達成した瞬間はどんなに喜びに満ちているのかと期待したからです。そんなことがあるのか、人生って、目標を達成したからといって、ハッピーエンドになれるのではないにか、と。
それ以降、宮脇さんは壮絶な虚脱状態に陥ります。あれほど大好きだった時刻表を"読書"するのにも、熱がこもらなくなったのです。月ごとに刊行される時刻表を買い忘れたりもしています。
ほかに趣味を見つけようとしますが、何をしても力が湧いてきません。
そのあと、かなり苦しまれるようです。
楽しみが多ければ多いほど、それが完成したあとの脱力感は半端ないのだと知りました。それならば、適当な楽しみであったほうが良かったのか?
脱力感に襲われることはないのではないか?
もしかして、すごいことをなすのは、幸せではないのかもしれい。
と思ったりしました。
マイケルジャクソンも「スリラー」以上のものを作るのに苦労していたし、
いつまでもマイケル・ジャクソンであることにこだわった。
ということで、宮脇俊三著「時刻表2万キロ」を強くおススメします。